本記事は、教師が子どもと信頼関係を作るたった1つの方法についてです。
教師は子どもの成長に関わることのできる、やりがいのある仕事です。しかし、子どもとの関係について悩んでいる先生も多いです。
■ 子どもと、どのように信頼関係を築けばよいかがわからない。
■ 自分の指導に対して、子どもが不平不満を言っている気がする。
■ 家庭で子どもが学校での出来事を悪く言うため、保護者との関係も良くない。
このように、子どもとの関わり方について悩むことがあると、教師はしんどくなってしまいます。時に子どもは教師に反発することもありますが、保護者や他の教師と協力して子どもの指導に当たれるならば大丈夫です。
今回は、学校の先生が安心して子どもと信頼関係を築けるたった1つの方法についてお話しします。
子どもが教師を信頼しなくなる原因は教師にある
子どもは、大人のことをよく見ています。子どもは信念のない大人のことを見透かし、大人から見れば「生意気な」態度をとるようになります。
しかし、どんな子どもでも「大人を信頼したい、信用したい」と思っています。
子どもが教師を信頼しなくなる原因は、教師側にあります。原因は、教師が子どもを「一人の人間」として接していないからです。
子どもも私たち大人と同じように、大人を判断します。
私たち大人でも、自分のことを大切にしてくれる人は、「信頼できる人だ」となります。
反対に、自分のことを雑に扱われたり、バカにされたり、どうでも良いような素振りをされたりすると、「嫌な人だ」「信頼できない人だ」と感じます。
子どもとの信頼関係を築くためには、先生自身の子どもに対する行動がすべてです。
子どもとの関係がうまくいっていない先生は、ぜひとも見直しましょう。
教師が子どもと信頼関係を作るたった1つの方法
子どもが教師を信頼するようになるために、以下のたった1つのことだけを守ってください。
子どもが下校するときに、納得した状態で帰らせる。
私は教師1年目は副担任でした。
副担任も、子どもに直接指導する機会はありますが、何かあったときは担任や学年主任が入ります。副担任が保護者と直接関わることはほとんどありません。
なので、2年目に担任になるときに、先輩教師に「担任で何か気をつけることはありますか?」と質問をしました。その時、先輩は言いました。
担任になると、いろんなことに対応しないといけないけど、自分が気をつけていることは1つだけ。それは「1日が終わったときに、子どもが学校での出来事に納得して帰っているか」ということ。
子どもが納得して帰れていない場合、子どもも不安だし、保護者も不審に思うし、教師も後でしんどくなる。
雪乃先生はよく子どもを見ていると思うし、丁寧に対応できているから大丈夫だと思うけど、これだけは押さえておいた方が良いと思うよ。
私は、先輩のこの回答を常に頭の片隅に置いて、教師をしてきました。
ときには上手くいかない場合もありましたが、子どもとの関係は「子どもが納得するまで丁寧に」を心がけることで、スムーズに行うことができました。
「子どもが納得して帰る」ための指導の手順
子どもが納得せずに帰ってしまうのは、ほとんどが「子どもに対する教師の指導に納得がいかない場合」です。子どもは、教師の指導に対して不満をもらすのです。
具体例を挙げて、指導方法を説明します。
【例】3時間目が終わった休憩時間に、自分の学級のA君(中学1年生)が、同じ学級のB君を数回殴りました。
普段は仲が良い2人で、お互いしょうもないことを言い合って、笑っています。
ことの発端は、B君がいつもの調子でA君を軽くからかいました。A君もB君を軽くかわしながら、B君を少しからかうこともしていました。しかし、B君のからかいがいつもよりしつこく、A君は我慢できなくなり、B君に殴りかかり、周りの子たちが止めてくれました。
A君は周りに止められ、すぐに止まりましたが、B君はA君の様子にとても驚いた様子でした。
この場合、は以下の通りです。
【指導のポイント】
・手を出しているA君は、絶対にいけないことをしています。
・しかし、「A君だけがダメ」という指導はもちろん違います。
・仲の良い2人が、この出来事に対して納得をして下校できるようにする必要があります。
・周りの子どもたちの対応や反応にも気をつける必要があります。
【指導の手順】
① 指導は1人で当たらずに、学年生徒指導・学年主任にも入ってもらう
② 子どもが落ち着いている時に指導する
③ 1人ずつ話(事実・感情・今後)を聞く
④ 当事者の事実関係が合っていれば、当事者を会わせる
⑤ 保護者に連絡する
順番に見ていきましょう。
① 指導は1人で当たらずに、学年生徒指導・学年主任にも入ってもらう
大前提として、何人もの子どもたちが関わっている事象には、担任1人で当たらないことが大切です。
この場合は、A君とB君の2人だけが当事者ですが、周りにいた子どもにも聞き取りをする必要があります。
ことが起こったらすぐに学年教師に伝え、「放課後、1年1組と2組の教室を使って、A君には担任が、B君には学年生徒指導が話を聞く」と方針を立てましょう。
学年複数人で、指導の方針を決める。
② 子どもが落ち着いている時に指導する
指導する対象である子どもは、興奮している場合が多いです。
小学校や中学校では、昼休みや放課後まで、じっくり時間をとることはできません。
ことが起こった後に、落ち着いて授業を受けられる場合は、「昼休み・放課後に話を聞く」ことを伝えて授業に参加させましょう。
興奮がさめない場合は、生徒指導室や空き教室など、学校ごとに「落ち着かせる場所」があると思いますので、落ち着かせてから子どもを教室に戻すようにしましょう。
教室に戻す際には、「もう大丈夫か?落ち着いたか?」と確認し、教室の席につくまで、見届けるようにしてください。
まずは、子どもたちを落ち着かせる。
③ 1人ずつ話(事実・感情・今後)を聞く
ゆっくり時間をとれるようになったら、1人ずつ話を聞くようにしてください。
子どもたちの話は、必ずメモをとりましょう。
興奮していると、A君とB君で事実関係が異なる場合もあります。昼休みや放課後までに時間がある場合は、周りにいた子どもに、事実関係を確認しておくとスムーズです。
放課後、1年1組の教室で、担任がA君が認識している事実・感情・今後B君とどうしたいか、を確認します。1年2組の教室では、学年生徒指導がB君に同じことを確認します。
1人ずつ話を聞く段階では、事実関係を合わせることが大切です。事実関係が一致するまでは、A君とB君を怒ったり叱ったりすることはせずに、まずは事実を確認します。
一通り話を聞いたら、担任と学年生徒指導は教室の外に出て、2人の事実が合っているかを確認します。
このときに、周りにいた子どもの話と合っていれば問題ないですが、合わない場合は2人の認識を確認していく必要があります。
この事実関係を無理やり合わすようなことをしてしまうと、子どもは不満や不安を感じます。必ず、自分の口で真実を言わせるようにしてください。
1人ずつ話聞いて、当事者の事実関係を合わせる。
④ 当事者の事実関係が合っていれば、当事者を会わせる
当事者を会わせるのは、当事者の事実関係が合ってからです。お互いの認識が合ったところで、お互いの反省をする、謝る場合は謝るようにします。
【A君の感情・今後】
・A君の反省は、B君に手を出してしまったこと。
・いつもは少しからかわれたぐらいでは何も思わないが、容姿で気にしていることを言われてカッとなってしまった。
・A君は、自分もB君をからかったことはダメだったと思っている。
・A君は、B君に対して謝りたいと思っている。
【B君の感情・今後】
・B君の反省は、A君をしつこくからかったこと。
・B君は、A君の「容姿をからかう言葉」がそこまで嫌だとは思っていなかった。
・A君に殴られたのは驚いたが、自分も悪かったのでA君に謝りたいと思っている。
事実関係が合ってからは、当事者の感情や今後の行動について、話を合わせていきます。
事実関係を確認すると、子どもがその時の自分の感情を振り返ることができるので、自分や相手に対しての理解が深まり、その出来事や指導に納得できるようになります。
この場合、A君には言ってほしくなかった「容姿をからかう言葉」がありました。それをB君が理解できたのならば良いです。また、A君は「どんな場合でも暴力はいけない」ということを学びます。
これらを一つずつ丁寧に指導する必要があります。
最後に、「今日のことを保護者に伝える」ことを子どもに伝えて下校させます。ちなみに、指導が最終下校よりも遅くなる場合は、必ず保護者に一報を入れてから指導するようにしてください。
当事者同士の理解を深め、教師が丁寧に指導することによって、子どもの納得感を高める。
⑤ 保護者に連絡する
子どもを帰したあとは、保護者に連絡をとります。
保護者には、事実関係を伝え、A君とB君がどのような状態・感情だったか、どのようにこの出来事で成長したかを伝えます。
子どもが納得して帰宅している場合、保護者はきちんと話を聞いてくれます。
顔を合わせて喋れる場合は、できるだけ家庭訪問をして喋った方が良いです。足を運んだ教師に対して、保護者は感謝を示してくださいます。
子どもの対応も保護者の対応も丁寧に。
丁寧な対応が教師への信頼を生む
今回は、一つの例を見て、教師が子どもと信頼関係を築く方法をお伝えしました。
学校では毎日たくさんのことが起こりますが、「教師が常に丁寧に対応する」ことを心がけるだけで、子どもは安心して過ごせるようになります。
始めは「丁寧すぎる」「しつこすぎる」ぐらいで構いません。学級経営や生徒指導がきちんと出来ている先生は、みんな丁寧です。
丁寧な先生は、「子どもが不安になっている」「子どもが不満をもっている」ことに対して常にアンテナをはっています。
やり方は先生によって違って問題ないですが、子どもとの信頼関係を築くためには一貫して「子どもを一人の人間として接する」ことを実践してください。
学校で奮闘する先生方が、子どもたちと良い関係を築けるように応援しています!