本記事は、学級経営の清掃指導・環境整備のポイントについてです。
■ 「学級経営が上手くいかず、学級が荒れてしまうかもしれない」と不安だ。
■ 子どもたちが、まったく自分の言うことを聞く様子がない。
■ 学級が荒れていて教室が汚い。
このように、学級経営に悩んでいる先生は多いです。いろんな子どもがいるので、学級経営は一筋縄にはいきません。
しかし、荒れている学級や学校には、ある一定の特徴があります。それは、清掃指導・環境整備が出来ていないことです。
今回は、学級経営の要とも言える「清掃指導・環境整備」についてお話しします。
毎日の学級経営にお疲れの先生は、きちんとした清掃指導・環境整備に取り組んでみてください。
清掃指導・環境整備は「安心安全の環境作り」の要
学級経営で大切なことはたくさんあります。先生によってもいろんな考えがあります。
しかし、学級経営の中で一番簡単に出来ることで、効果抜群なのが「清掃指導・教室の環境整備」です。
ある先生は、「学級経営で一番大切なことは、子どもや保護者との関係を築くこと」と考えるかもしれません。
それは間違いないのですが、子どもや保護者との関係はいろんな人がいて、担任との相性もあるため、必ずうまくいくとは限りません。
人間関係を構築するよりもはるかに簡単で、すぐに実践できることが清掃指導・環境整備です。
初担任の先生や、学級経営にあまり自信がない先生は、学級経営に対する不安をもっています。学級経営に不安があると、「あれもこれもしないといけない」と思って結局すべてが中途半端になってしまいます。
学級経営は多岐に渡りますが、まずは「教室を安心安全の環境」にすることができると、学級経営に自信がもてるようになります。
子どもは学校で、「勉強を頑張りたい」「部活動を頑張りたい」「友達と仲良くしたい」と思っています。子ども達がそれらを実践するためには、学校が不安で危険な場所であってはならないのです。
子どもたちは一日の大半を学級・教室で過ごします。学級経営で大切なことは、子どもが安心安全に過ごせる環境を作ることです。
「安心安全の環境」は自然に出来上がるものではありません。子どもに規則を守らせ、担任と子どもたち全員で「安心安全の環境」をつくっていきましょう。
教師の仕事は「子どもに規則を守らせること」。子どもたちの仕事は「規律を守ること」です。
「安心安全の環境作り」の要となる清掃指導・環境整備を実践していきましょう。
清掃活動・環境整備の4つの効果
清掃活動は毎日学校で行われていますか?「掃除の時間」のとり方は学校によって異なりますが、だいたいの学校が以下に当てはまるはずです。
・ほぼ毎日、全員で掃除を行う学校
・ほぼ毎日、当番制で掃除を行う学校
・隔日で、全員で掃除を行う学校
・隔日で、当番制で掃除を行う学校
掃除の頻度や制度が違っても、必ず全員が学校のどこかを掃除するようになっています。
掃除の時間は、子どもたちの時間を使って活動する大切な時間なので、十分な効果を発揮できるように行いたいものです。
まずは、清掃活動・環境整備がもたらす4つの効果についてお話しします。
■ 授業に集中する環境を作ることができる
■ 心を落ち着かせることができる
■ 少しの変化に気付くことができる
■ 人に感謝できる
一つずつ見ていきましょう。
授業に集中する環境を作ることができる
まずは教室の環境について、チェックしてみてください。
□ ゴミが床にたくさん落ちている
□ 黒板が汚く、黒板の下もチョークの跡で汚れている
□ ゴミ箱がゴミであふれている
□ 教卓の上や棚が散らかっていて、物があふれている
□ 教室の掲示で授業や学習に関係のない物がたくさんある
□ ロッカーの上や前に、物や子どもたちの私物が大量に置かれている
□ 机の横のフックに物がかかっていたり、机の周りの床に物を置いたりしている
□ 机の上に不要な物を出している子どもが多い
□ 机や教室の壁などに落書きが多い
以上の項目で当てはまるものが多い教室では、子どもたちは授業に集中することが難しいです。
たくさんの項目が当てはまる教室を想像するだけで、しんどい気持ちになりますよね・・・。
□ 教室の床にゴミ・ほこりが落ちていない
□ 黒板と黒板の溝がきれいである
□ 黒板消しとチョークが必要分だけ置かれている
□ 黒板の下の床が汚れていない
□ ゴミ箱はゴミであふれていない
□ 掃除道具入れはキレイにしている
□ 教卓の上や中、棚が整理整頓されている
□ 学級文庫がキレイに並べられている
□ 教室の掲示は必要な物だけに絞られている
□ 子どもたちの荷物はロッカーの中か、机の中にすべて入っている
□ 机や教室の壁などに落書きがない
以上の項目は、チェックがあればあるほど「子どもたちが授業に集中しやすい環境」です。
教室環境は、先生によってこだわりがある部分もあると思いますが、これらの項目が当てはまる教室はスッキリきれいな状態ですので、子どもたちが安心して過ごせる教室になりやすいことは確かです。
・教室には不要な物は置かず、必要な物だけ置きましょう。
・物はすべて整理整頓しましょう。
心を落ち着かせることができる
教室が散らかったり、汚かったりすると、子どもたちはイライラしやすくなります。
ゴミが教室の床にたくさんあると、子どもはゴミを床に捨てます。
ロッカーの上や前に物がたくさん置かれてあると、子どもはそこに物を投げ置きます。
机の周りに荷物が多いと、教室内を歩きにくくなり、ストレスがたまります。
このような環境では、子どもたちは「これぐらい良いか」という考えになってしまいます。「何か嫌で、落ち着かない」とか、「自分たちの教室は汚いけどしょうがない」とか。落ち着いた気持ちで教室にいることができなくなってしまいます。
整った教室では、子どもは心を落ち着かせることができるのです。
少しの変化に気付くことができる
ゴミがたくさん落ちている教室に、紙くずを1つ落としました。
この場合、誰もその紙くずに気付きません。
紙くずが1つ落ちたところで、大した変化はないため、誰も気に留めません。
これは大問題です。
しかし、清掃の行き届いている教室では、子どもは紙くずをポイッと捨てようとはしません。
キレイな教室では、誰もが紙くずに気付きます。
「紙が落ちましたよ。」「ゴミはゴミ箱に捨てましょう。」
そんな声かけがすぐにできます。
キレイな教室では、環境の変化に気付き、子どもたちの行動を集中して観察することができます。
人に感謝できる
教室がキレイ。廊下がキレイ。手洗い場やトイレがキレイ。
子どもたちが、きちんと清掃活動をしている場合、「キレイな状態」に気付くことができます。
「自分が掃除したから、教室にゴミが落ちていない」
「黒板をキレイにしてくれる子がいるから、自分の学級の黒板はいつもキレイだ」
「○組の子たちがトイレを掃除してくれているから、トイレがキレイで嬉しい」
掃除をすることで、どれだけゴミやほこりが出るか、雑巾がどれだけ汚れるか、を知ることができます。清掃活動をしていると、キレイな状態を保つために、誰かが掃除してくれていることに気付けるようになるのです。
「自分たちのために頑張ってくれている、仲間の誰かに感謝する」ことができると最高ですね。
清掃活動の5つのポイント
子どもたちに清掃活動を積極的に行わせるための5つのポイントは以下の通りです。
■ 一年間を通して「みんなで安心安全の環境を作る」ことを伝える
■ 班活動にして1人が1つの仕事をやり切る
■ 子どもに自己チェックをさせる
■ 清掃場所はある程度の期間固定する
■ 教師も一緒に清掃する
一つずつ見ていきましょう。
一年間を通して「みんなで安心安全の環境を作る」ことを伝える
学級経営の大前提は「みんなで安心安全の環境を作る」こと。これを一年間、子どもたちに徹底して意識させます。
安心安全の環境作りの一環として、清掃活動があることを伝えましょう。
学級が「自分たちが頑張れる環境」であるかどうか、自分たちで作れているかどうか、を子どもたちに問いかけることが大切です。
できている場合は、大いに褒めてあげてくださいね。
班活動にして1人が1つの仕事をやり切る
清掃活動は班で行うのがベストです。
清掃場所ごとに班を当て、責任をもって担当場所を清掃させます。
教室の場合は「ほうきと机運び、ちりとり」「ぞうきんと机運び」「黒板と黒板下のぞうきん」に分類し、掃除時間をフルに有効活用できるように担当を決めます。
掃除時間に暇をしている子どもがいないように、全員が流れるように掃除できるように、仕事を分担することが大切です。
子どもに自己チェックをさせる
「今日の清掃活動はどうだったか?」を子どもに自己チェックさせるようにしましょう。自分の担当をきちんとできたか、掃除の振り返りをすることが大切です。
子どもは「きちんと掃除できる子」が好きです。子どもは「掃除をサボるヤツ」が嫌いです。
子どもたちは知らずしらずのうちに、掃除で友達を評価しています。信頼できる子かどうかを確認しています。
自分をごまかすことがないように、班の子たちから信頼されるように、清掃活動に取り組ませることが大切です。
清掃場所はある程度の期間固定する
担当の清掃場所は、ある程度長い期間固定すると良いです。
教師によっては一学期の間、ずっと同じ場所を掃除させるという学級もあります。ある子の担当は「一学期は教室のぞうきんと机運び」ということです。
一学期間は長過ぎる、と感じる場合は一ヶ月(4週間)、2週間ごとに清掃場所を変更する、でも構いません。
1週間ごとに清掃場所を変えるよりも、ある程度長期間、担当を固定することで、子どもの責任感が増します。
子どもは、自分のやるべきことがわかると、きちんと取り組みます。
「自分の担当は〇〇だ」と理解させ、体に染み込ませてあげることです。
教師も一緒に清掃する
清掃指導は教師が子どもに「あれをやれ」「これをやれ」と指図することではありません。
もちろん声掛けはたくさんしたら良いのですが、教師が掃除している様子を子どもたちに見せることも大切です。
特に、ぞうきんを使って掃除をしましょう。水回りの排水溝を掃除しましょう。
一番汚いと分かっている所を掃除している姿を、お手本として見せてあげましょう。
「安心安全の環境作り」を教師も進んで行っていることを見せることで、子どもたちも積極的に掃除をするようになります。
【整理整頓と整列】環境整備の2つの実践方法
次に、教室の環境整備の2つの実践方法についてお話しします。ポイントは整理整頓と整列です。整理整頓と整列も、教師と子どもみんなで行います。
■ 子どもたちの整理整頓と整列
■ 教師の整理整頓と整列
では、実際に何をすればよいのか、見ていきましょう。
子どもたちの整理整頓と整列
教室で、子どもたちが整理整頓に使える場所は、ロッカーと机の中だけです。したがって、ロッカーと机をキレイな状態に保つことが大切です。
子どもたちの整理整頓
まずは整理整頓から。次のポイントを子どもたちに紹介してあげてください。
【整理整頓のポイント】
・学校に置いて良い物は、すべてロッカーに入れる
・ロッカーでは、教科書やファイルなどを立てて入れる
・毎日持って帰る物は、登校後に机の中に入れる
・プリントは配布されるたびに、ファイルに入れて保管する
・授業中は教科に必要な物だけを机の上に置く
・下校時は机の中を空っぽにする
これらのポイントを実践できれば、子どもたちのロッカーと机は整理整頓され、常にキレイな状態を保つことができます。
ちなみに、部活動でテニスラケットやサッカーボール、野球のバットなど、長い物や大きい物を使う場合、特別にそういう物を置くスペースを作ってあげましょう。
以下のように、教師が物を置く場所を決めて、子どもにルールを守らせるようにしてください。
「テニスラケットや野球のバットはロッカーの上に置いてもOK」
「サッカーボールは〇〇番~〇〇番のロッカーに置いてOK」
子どもたちの整列
次は整列です。子どもたちに整列させる物は「机」です。教室の机がキレイに整列していると、本当に教室が整って見えます。
子どもたちに整列させるポイントは以下の通りです。
【机の整列】
・号令をするときに「机を整える」を加える
「起立」は立つ、椅子を机の中に入れる
「机を整えてください」で、縦の列、横の列を揃える
「服装を整えてください」で、身だしなみの確認をする
「気をつけ」
「礼」1・2・3を数える
開始は「よろしくお願いします」、終わりは「ありがとうございました」
・朝の会から終わりの会まで、すべての号令で行う
朝の会、授業ごと、終わりの会で「机を整える」のです。
ちなみに、机を整えた後に、服装も整えています。この号令も、慣れればすぐにできます。
この号令で休み時間との区別をきちんとつけ、子どもたちのダラダラした雰囲気を断ち切ることができます。
机が整列していることが当たり前になると、気持ちが良い教室を作ることができます。
教師の整理整頓と整列
整理整頓と整列は、子どもたちにだけさせるわけにはいきません。教師も進んで、教室の整理整頓、整列を行いましょう。
教師の整理整頓
教師がする整理整頓は、以下の項目があります。
【整理整頓】
・子どもたちの整理整頓をチェックする
→子どもたちが使って良い場所(ロッカーの中、机の中)に物を置いているか
→机間巡視し、子どもたち全員に声掛けをする
→机の横に物をかけていたり、荷物をしまえていない子どもに行動させる
・掃除道具入れもキレイに使われているか確認する
・教卓の上には物を置かない
・教卓の中は必要な物だけを置き、整理整頓する
→前々の配布物を教卓の中にためない
・棚の中も必要な物だけを置き、整理整頓する
→学級文庫はキレイに並べた状態を保つ
子どもたちのロッカー、机と掃除道具入れは整理整頓のチェックをしましょう。きちんとできている場合は、褒めてあげることが大切です。
子どもたちに「落ち着いた環境で過ごしてほしい」ということを繰り返し伝えると良いです。
終わりの会が終わった後に、教室が整理整頓できているかを確認するようにしてください。
教師の整列
子どもたちは、机の列を整えました。教師も同じです。
・号令のたびに、教卓を列の中心に整える。
子どもたちの机の列が整っているのに、教卓だけ歪んでいたら違和感を感じます。「整っていないと気持ち悪い」環境を作れたら良いです。
終わりの会が終わった後に、子どもたちの机の列が整っているかを確認して、一日を締めくくりましょう。
学級みんなで整理整頓と整列を
教室環境は、学級のみんなが整理整頓と整列をすることで、整備されます。
「○○先生の教室はキレイ」と言われる環境を、教師と子どもたちで作っていきましょう。
環境整備のポイントはたくさんありますが、
・まずは教師がやる
・子どもたちに指示をする
・教師が都度アドバイスをする
・子どもたちに習慣化させる
・教師が1日の終わりに確認する
この流れで、環境整備を習慣化させ、1日の終わりに一番キレイな状態にリセットすると良いです。
一学期の始めから一貫して「安心安全の環境を作る」ことを伝え、学級経営に役立てて見てください。
「今、学級が荒れていて、教室が汚い」という学級でも大丈夫です。「最近教室が汚いと思う」と、子どもたちに伝えることから始めていきましょう。
【みんなで清掃活動・環境整備】学級経営の基本
人は、キレイな落ち着いた環境が好きです。
ある程度汚れていないと落ち着かない、と感じる人もいるかもしれませんが、学校は集団活動の場所です。どれだけキレイにしていても、たくさんの人が活動する場所は散らかり、汚れていきます。
集団活動の場をキレイな状態に保つためには、教師と子どもたちが協力して清掃活動・環境整備するしかありません。
きちんとした清掃活動・環境整備は、子どもたちにも教師にも、良い効果しかありません。
「学級経営が上手くいっていない」「子どもたちが言うことを聞かない」などの悩みがある先生は、まずは清掃活動・環境整備です。
清掃活動・環境整備の大切さを子どもたちに理解させ、安心安全の環境作りができる学級をつくっていきましょう。